リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
「リリィお姉様?」

 ロージーに声を掛けられて、ハッと我に返った。
 どうやら考え事をして、呼び掛けに気づかなかったらしい。

「どうなさったのですか、お姉様? ご気分でも?」

 心配そうにロージーが前のめりになる。

「大丈夫よ」

「誰か呼んで来ましょうか?」

「いいえ、大したことないから気にしないでちょうだい」

「そうですか……?」

「それより、ロージー。 貴方もお年頃、お父様達から何か話はされないの?」

「話、とは?」

「貴方の縁談よ。 たくさんお話が来ているのでしょう?」

 ロージーは頬を少しだけ赤らめて俯く。

「どなたか慕っている殿方が?」

「こうして時々、お姉様のお側にいられたらそれだけでじゅうぶんですわ」

「きっとロナウドも心配のはずよ。 美しい義妹が縁談を断ってばかりで」

「そんな事は……」

 ロージーは奥手なのか、相手に高望みすぎるのか。 それともいつまでたっても姉の私にべったりなだけなのか。

 一つ言えるのは、妹はとても美しく、おそらく王子に見初められたとしても可笑しくないだろうという事だ。
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