お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~

三間さんは言った通りに池に連れてきてくれた。
目的地に着いたので、三間さんが再び口を開く。

「翠さん。 俺と結婚しよう」

三間さんの口から飛び出した言葉に口をパクパクさせる。
それこそ、すぐ側でこの話を聞いているだろう鯉のように。

「ご、ごめんなさい! 三間さんの結婚相手は、私ではなくて、姉の方なんです! それがどうしてか、今朝姉はいなくなっていて……」

私が身代わりであることを、ちゃんと知っておいてもらわないと、後々姉が帰ってきた時に面倒だと思って話す。
けれど三間さんはあっけらかんと言った。

「うん、わかっているよ。 咲稀さんの代わりに、翠さんが来たんだろう?」

そういえばさっき、事情は全部知ってる風なことを言っていた気がする。
その時に、俺が守る、とかよく分からない発言をしていたっけ。

「は、はい。 ですから、私と正式に結婚をしなくても――」

「多分咲稀さん…お姉さんは、俺と翠さんが夫婦になるまで帰ってこないと思うよ」

「え……!? ど、どういうことですか? もしかして、姉の居場所を知っているんですか!」

三間さんは次々と訳の分からないことを言う。
彼は姉の失踪について、詳しく知っていそうな感じだ。
姉の居場所が分かって帰ってくれば、全て丸く収まる話じゃないか。
なんとしても聞き出して、元通りの縁談を――

「居場所までは知らないかな。 けど、咲稀さんは、俺と翠さんが結婚することを望んでいる。 彼女本人から聞いたことだから間違いないよ。 というか、俺たち共犯だからね」

も、もう、何が何だかわからない。
三間さんと姉は共犯?
三間さんは、姉が失踪することを知っていたの?
でも、どうしてお姉ちゃんは、私と三間さんに結婚してほしいんだろう。
ただ、自分の代わりに妹を差し出しただけ?
え、私の姉ってそんな事する人だったっけ。
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