お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「松下はただの同期。会いに来たって、何しに…」

「本当に? 松下さんと付き合っているんじゃないんですね?」

「そんなわけないだろう。 翠という妻がいながら、誰がそんな馬鹿なことをする。 松下さんがそう言ったんだね。もう来ないように言っておく」

私という妻がいながら……でも、本命の人は他にいるんだよね?
モヤモヤが止まらなくて、もうこの際はっきりさせてしまおうと決意した。

「じゃあ、航太郎さん、他に本命の女性は? 誰にも渡したくないくらい大切で、必ず幸せにしますと誓った相手は誰ですか?」

浮気を疑う妻の尋問みたい。
ぽかんとする航太郎さんの表情に、言葉にしてしまってから怖くなる。
沈黙が続くと、勢いが失せて途端に恐怖と不安に襲われた。
きゅっと目を瞑って、俯く。
すると、航太郎さんは何かを思い出したように言った。

「翠がそれを聞いたのって、最近だよね。電話していた時?」

じっと目を見つめられて、こくんと頷く。
彼は私の反応に、はぁ…と大きなため息を吐き出した。

「誰にも渡したくないくらい大切で、俺の手で幸せにしたいのは、翠だよ。 君以外にそんな人、いない。 その時俺は、咲希さんにそう誓っていたんだよ」

「へっ……お姉ちゃん…?」

予想もしていなかった人の登場で、頭が追いつかない。

「そう。言っとくけど、咲希さんと電話したのはその時が初めてだよ。連絡先は交換していたけど、必要な時以外はって話していたから。 咲希さんは、翠の様子がどうしても気になって、と言っていた」

「こ、航太郎さん……姉と、繋がってたんじゃないですか!!」

話の論点がずれているのは分かっていても、衝撃の事実に驚かずにはいられない。
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