お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「ごめん、何も言わなかったことは謝る。でもお姉さんの詳しい状況と事情は、直接会った時に本人に聞いてほしい。翠に会いたがっていたし、近いうちに帰ってくるんじゃないかな」

「はっ…え、か、帰ってくるんですか? お姉ちゃん」

「うん。…けど、咲希さんが帰ってきても、俺が結婚するのは翠だよ。 それに、翠だって、もう俺から離れられないよね」

言うなり、航太郎さんが意地悪く微笑む。
まって、それは――

「好きなんだろ? さっき、俺に他に好きな人がいると勘違いして、嫉妬したと言ってたじゃないか」

「いっ…言ってません!」

言ってない……よね?
けれど、彼の言うことに否定できないこともある。

「…頬が赤くなってる。照れるなよ、可愛いな」

目を細めて私を優しくソファに押し倒し、髪を弄ぶ。
早く白状しろとでも言うように、頬や唇にキスを落とされる。

「こうたろうさん……っ…まっ、て」

「ん?」

純粋無垢を装って、私の視線を捉えて離さない。

「すっ………好き…」

私の心に芽生えた恋心。
私だって、航太郎さんを誰にも渡したくない。

「よくできました」

満足気に微笑んだ航太郎さんは、どんどんキスを深くしていく。
いたずらっぽく耳をかぷりと食べられると、我慢できない声が零れた。

「可愛い。好きだよ」


その日、私は航太郎さんの滴る愛に応えた。

にこにこしていたかと思ったら、強引に愛を迫ってきたり、ひたすら愛を囁いて離してくれなかったり。
そんな彼を、いつの間にこんなに好きになっていたんだろう。
私はこの人と、ずっと一緒にいたいと願うようにキスを受け止めた。



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