粗大ごみを拾ってしまった(番外編その3)大森VS巫女の不適切な接触問題
<貸会議室・15時10分>

「薬!!
今日は2倍飲んだから平気です!」

リシェルは
大森の言葉を無視して、
どんどん近づいてくる。

大森は逃げようとして、
腰を浮かそうとした時だった。

リシェルの声が響いた。

「動いてはダメ!!」

その声は
大森の体を金縛りのように、
動きを止めてしまった。

身動きが取れない、
声も出ない。

目しか動かすことができない。

これは・・
いったい何の力か・・・!?

大森は、
初めての体験にパニックになっていた。

とうとう、
リシェルは大森の隣の椅子に座った。

「ごめんなさい。
(しるし)の力を使いました。

お兄様の上書きだし、
消えかかっているから、
3分くらいしか持たないけど」

(しるし)の力>・・・
ああ・・
リシェルが俺につけたあれか・・・

「直接大森様に触れると、
私の痕跡が残ってしまうので・・・

お兄様にばれるから、
こうするしかないです・・・」

リシェルはラップの箱から、
透明なラップフィルムを
長く引き出して、

自分の手首から手の甲、指を
すっぽりとくるむように巻いた。

「今日の目標は、
大森様の隣に座る事、
可能なら手つなぐ・・・
まで、いかないけど」

そして、
机の上に置かれた大森の片手に、
自分のラップにくるまれた手を重ねた。

そして<ほうっ>と息を吐いた。

「大森様の手は・・大きい
それに冷たいのですね・・」

そしてリシェルはもう片方の手も、自分の手の甲に重ねた。

リシェルの視線は、
重ねられた手から
動くことはなかった。

大森も自分の手の上に、
重ねられているリシェルの手を見た。

白い小鳥のように小さな手・・・
指先の爪は
桜貝のピンク色をしている。

ラップを通して、
温かいぬくもりが感じられる。

一瞬、
リシェルの手に力が入った。

「大森様、
このことは絶対に
お兄様に言わないで!!

ばれたら
神殿に強制送還ですから!!!!」

大森を見つめるリシェルは、
真剣だった。





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