運命の推し
高村先生が不思議そうに私を見ている。

「あぁ、ごめんなさい」

「検査結果ですが、後日ご家族の方と聞かれますか?」

「え?」

関係のないことを考えていたから。

ぼんやりとしたおばあさんだと思われてしまったらしい。


「えっと……」

どういうふうに言い訳するか、まるで小さな子どもみたいに頭の中で考える。


高村先生は、
「そうしましょう、確か娘さんと同居なさっていましたよね?娘さんとまた後日改めて……」
と、どんどん話を進めた。




……困った。



これは娘に怒られてしまう。



そんなことを頭のすみで考えつつ、私は次回診察の予約を済ませた。



90歳の手前にもなると。

病院の中を歩けば、見知った顔をチラホラ見かける。


「あら、田嶋(たじま)さん」

私はお会計を待つ、待ち合いのベンチに座っている田嶋さんを見つけた。

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