運命の推し
「なんだか、肌がツヤツヤしているように見えるんだけど」

思いもよらない言葉に、びっくりしちゃった。


「何言っているのよぅ、こんなシワシワのおばあさんつかまえて、何にもでないわよぅ」

そうは言いつつ、内心では喜んでしまう。


「あ、でも私も思ったわ。前よりハツラツとしてるように見えるわよ」

「何か良いことでもあったの?」


みんなの質問攻めに、私は戸惑いつつ考えてみる。


良いこと、ねぇ……。



ひ孫から「推し」について教えてもらったり。

「推し」の出ているDVDやらを観させてもらったり。


そうよ、まず「推し」という存在がいること自体が良いことだわ。



だけど。


そんなこと、この場で言いにくい。




「別に何もないわよぅ」


はぐらかしたほうがいい、と判断した。











家に帰ると。

日向の部屋を訪れた。

「日向、ちょっといい?」

「あ!笑子ばあちゃん!!いいところに来たー!」

日向がスマートフォン片手に、私のそばまで来る。


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