逃げて、恋して、捕まえた
「そうだ、マンションを買おうか?今のところじゃ2人では狭いし、この先家族も増えるかもしれないしな。親父に言ってよさそうなところを探してもらうよ」
「ちょ、ちょっと待って」
「やっぱり都心がいいよなあ」

一人で勝手に話をすすめようとする蓮斗の側に私は歩み寄った。

ここではっきり言わないと、ずるずると関係が続いてしまう。
私は決心して蓮斗と向かい合った。

「蓮斗落ち着いて。私は蓮斗と暮らせない。もう別れたんだから」

簡単には理解してもらえないのかもしれない。
何度も繰り返してわかってもらうしかない。

「なあ、芽衣」
「何?」

グイッ。
「キャー」

いきなり髪をつかまれ、引っ張られ、悲鳴を上げた。

「芽衣のこの髪、俺は好きだよ」
言っている言葉は穏やかなのに、髪の毛が抜けそうなほどの力で引っ張る蓮斗。

「お願い、やめて」
私は必死で訴えた。

そう言えば、蓮斗はこんな人だった。
一見優しいのに、気に入らないことがあると怒りだしてときには手が出る。
でも、それでも蓮斗のことが好きだったから、私がいけなかったのねと自分を納得させてきた。
それが間違いだったのよね。
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