青、こっち向いて。
たまちゃんには再三、大丈夫だよって伝えてなんとか納得してもらった。
まだ明るいうちならさすがに手を出されたりしないと思うし、昨日の今日だからきっとあそこにも溜まっていないと思う。
城田くんが助けてくれたから、たぶんしばらくはあの場所にいないと思う。だって城田くん、助けてもらっている私から見ても、ちょっとコワかったから。
午後の授業もあっという間に終わり、放課後になった。
今日も教室に残って本を読んでいた城田くんはしばらくするとパタンと本を閉じて帰っていく。あ!今日は机に置いていかない…?
ということは、あの本は読み終わったってことなのかな
「あーっちゃん、見すぎだって」
ぼーっと教室を出ていく城田くんを見守ったあと、たまちゃんが笑った。
そ、そんなに見てたかな
「そんなんじゃ本人にバレるのも時間の問題かもよ」
ケタケタ笑ってたまちゃんはカバンを肩にかける。
「途中まで一緒に帰ろ!」
たまちゃんに頷いて、私もカバンを肩にかけて立ち上がった。
そのとき、教室の扉から担任の先生が顔を覗かせていることに気がついて首を傾げた。
キョロキョロと見渡して、誰か探しているみたいだ。
私たちは先生に「さよなら」と声をかける。
「あ、久原、小間、城田見かけてないか?うっかり城田のノートだけ返し忘れちゃってな」
小間、は、たまちゃんの苗字。小間珠子。逆から読んでもこまたまこ。たまちゃんの自己紹介に、本当だ、なんて驚いた記憶がある。
たまちゃんと顔を見合わせて、たまちゃんが先生に「さっき帰りましたよ」と言った。
「えー、課題に使うノートなんだよなあ、悪いんだけど城田のこと見かけたら声かけておいてくれ」
まいったなあって先生が去っていくのを見てから、私は弾かれたように走り出した