青、こっち向いて。
放課後になると、たまちゃんは教室まで迎えにきた香椎くんに呼ばれてカバンを持って立ち上がる。
「あっちゃんまた明日ね!」
「久しぶりあっちゃん、俺もまた明日ね〜」
「明日はバイト休みだから。あんたに“明日”はないよ」
「タマ、お前ほんと可愛くねえな、あっちゃん見習えよ、あんな可愛い笑顔で手振ってくれてるぞ」
「え?!あっちゃん、このもやしにはその笑顔もったいないから無表情でいいよ!あと手も振らなくていい!無視しておいていいから!」
二人の仲のいいやりとりを聞いて、クスリと笑ってしまう。
香椎くんと話したのは一度か二度だったけど、とてもフレンドリーで、初めて話した日にはたまちゃんと同じように“あっちゃん”と呼んでいた。
二人に手を振って姿を見送ってから、私もカバンを持って教室を出る。
と、スマホの通知が来て、嫌な予感がした。
あまり気が乗らないけど、スマホを取り出す。
予感、的中だ。
《あーちゃん、今日もいつも通りお願いね》
スマホに届いたメッセージを見つめて、その場に立ち尽くす。
この前の一件以来、こういうことはなかったから、久しぶりだった。
まだあの時の恐怖は鮮明に体に焼き付いている
どうしよう。
駅の方へ行かなければ、大丈夫だよね…?
家の近くのコンビニでご飯買って、家の近くのどこかで時間になるまで待てばいい。