触れないで、杏里先輩!
「それだと、北川君のご迷惑に……」

口から出たのは端からは遠慮しているように見えるだろうが、実は逃げる言葉。

貴方には物凄く感謝しています。
でもやっぱり私、貴方も怖いんです……。


「でもさっき電車を見送ったのは、怖かったからじゃないの?」

「う……」

どうやら全てを見られていたらしい。
私は視線を泳がせて、言葉を詰まらせるしかない。


「助けてあげるって言ったでしょ?それに向かう方向は一緒だよ?」

北川君と一緒に帰るのは私には治療の一環に確実になるだろう。

「で、では、お願いします……」

私はベンチに座りながら深々と頭を下げた。
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