触れないで、杏里先輩!
「坂井さんの駅は?」

会話が終わるかと思ったのに質問が飛んできた。

「H駅……」

私は早く会話を終わらせたくて小さい声だが返す。


「それなら方向一緒だから、一緒に帰ろう」

「え」

まさかの返しに、私はいつの間にか地面まで落ちていた視線を弾かれるように上げる。


「だって一人で帰るよりかは怖くないでしょ?」

笑顔の北川君。

彼は親切な人。

だけど、恐怖しか感じない。

私自身が頑張らないとこの体質はいつまでも治らないことは分かっている。
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