触れないで、杏里先輩!
私は心を決めて、横に座る杏里先輩に向くと右手を差し出した。

それを確認した杏里先輩の左手が動く。

大きな手が私の右手に伸びてくるのを見つめた。

気絶してしまう現実を受け入れようと思ったから。

杏里先輩の手はゆっくり近付いてくる。

きっと杏里先輩も緊張している。

そんな杏里先輩の手を見つめながら、私は違和感を覚えた。

あの時は縮む距離に、恐怖しか感じなかった。

でも今の私、初めて気を失った時の不安の音なんて一切聞こえない。

心臓は激しさを増していく。

それはまるで、高鳴っているような……

あと十センチ、九、八……と、早鐘を打つ心音を感じながら心の中でカウントダウンをする。

三、

二、

一……
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