触れないで、杏里先輩!
電車を降りるとやっとホッとした。

明日は九時に寝よう。
漫画は寝る前に絶対に読まない。
だって寝坊だけはしたくない。

丘の上を目指して坂を歩く。
笑い声や話し声、いつも感じない雑音を感じる。
私の足は自然と速くなる。

気持ち悪い。
朝ご飯を食べなかったせいもあるかもしれない。
なんとか目の前にやっと校門が見えてきた。

『ザァ!』

その時、強めの風が通る。
私は瞬時に焦ってスカートを押さえた。
だが長い髪は一緒に連れて行かれた。
そんな風はすぐに落ち着いてくれたが、私の髪は風の悪戯でボサボサ。
私は乱れた髪を手で整える。

するとふと目の前から視線を感じた。

目を向けると校門の向こうからこちらを見ていたのは、学園の王子の杏里先輩。

何故か目を見開いて硬直している。
どうしたの?なんて思っていると、驚いた顔のまま歩き出してきた。
そのまま校門に入るのだろうと思ったのに、なぜか校門を通り越した。
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