触れないで、杏里先輩!
「チョコクロワッサンと苺ミルク、ありがとうございました」

お礼を言うのを忘れていたと、今更思い出した私は慌てて頭を下げてお礼を告げた。

「どういたしまして。そいや、美桜は家は変わってないよね?」

顔を上げると整った顔が私を見ている。

「は、はい。杏里先輩と遊んでた公園の近くに今も住んでます」

それに気付いた私は思わずフイッとお弁当箱へと視線を逸らす。

「じゃあ相当通学に時間掛かってるんじゃない?」

「ご、五十分程、電車に乗ります」

「やっぱり掛かるね。人だらけでしょ。大丈夫?」

杏里先輩は心配そうな顔を私に向けた。

「いつもは人混みを避けて朝早くに乗るんです……。今日は遅刻しちゃったけど」

「だから今日まで会わなかったのか」

「ですね」
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