愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 疲れたんじゃないかしらと思うけれど、綾星さんは相変わらず元気で「夕飯は俺が作ろう」と言い出した。

「え?」

 いくらなんでも、それは無理でしょう。

「綾星さん、作ったことはあるんですか?」

「もちろんあるぞ」

 本人はやる気満々である。

「学生の頃、お好み焼き屋でバイトをしたんだ。だからお好み焼きと焼きそばには自信がある」

 意外過ぎる。渓流釣りに引き続きお好み焼き屋でアルバイトだなんて。

「そうなんですか」

 お好み焼きでいいかと聞かれて快諾した。それはちょっと食べてみたい。

「どうしてお好み焼き屋さんでアルバイトを?」

「好きだから」

「え? それは知りませんでした」

 五條家のハウスキーパーさんから聞いていた好きなものリストの中にはなかった。

「あはは、そりゃ知らないだろうね。家では食べたことはないし。学生の頃友人に大阪出身の奴がいて、そいつが作るお好み焼きとかたこ焼きがうまくて」

 君は休んでいてと、彼はひとりで買い物に出かけた。

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