愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 頬を寄せ合って自撮りをしてみたり、私たち離婚するんですよ?と何度も言いそうになったけれど、あまりに楽しそうなので我慢した。

「うわっ、ずいぶん急な階段だなぁ」

 松本城の天守閣の階段は、まるで梯子のように急になる。手放しでは登れない。

「そうなんですよ。ここはスカートでは来れないんです」

 ハッとしたように綾星さんは私を見下ろす。

 その目はまん丸で思わず笑ってしまう。

「大丈夫ですよ。私は旅行中はスカートは履きませんから。夕食時は別ですけれど」

「よかった。うんうん。さあ星光は先に」

「はい」

 後ろに彼がいてくれるのは、とても安心できる。私の背中に軽く手を添えてくれるから。

 良かった。本当に。

 終わりよければすべてよしというけれど、私たちの離婚旅行は思い出に残る楽しい旅になった。


 そして、綾星さんの休暇一週間のうち明日一日を残して、私たちは都内へ戻った。

 ひと月の約束でいうとあと半分残っている。

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