愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 変わらない土曜日の朝だ。

 振り向いたリビングがきれいに片付いているのも、静かなのも普段通り。

 休みだからといって一緒に過ごしてはいなかった。
 俺はほとんど仕事でいなかったし、いたとしても昼頃まで寝てそのまま出かけたり、顔を合わせない日もあった。

 強いて言うならば先週までの土曜には、ダイニングテーブルの上の離婚届はなかった。

 たったそれだけの違いである。



 星光の部屋に入ってみた。

 足を踏み入れるのは初めてで、細かい変化はわからない。

 三年間一度も入っていないとは、我ながらどうかと思うが、ここに来る用事もなかったのだ。仕方ないだろうと自分に言い訳をする。

 比較はできなくても、彼女の気持ちは見えた。

 目に留まったクローゼットが語っている。
 扉が大きく開け放たれていて、中にはハンガーがあるだけだ。
< 6 / 211 >

この作品をシェア

pagetop