愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 確かに五月には気を使わずにいられた。
 五月の話がまるっきり嘘というわけでもないのが辛いところだが、五月に気を使わなかった理由は、特に何も考えていなかったからだ。
 彼女が特別だったわけじゃない。

「脇が甘かったんだろうな。俺は」

「すまん」

「謝るなよ。お前に注意されたときに、もっと真剣に考えればよかったんだよな」
 後悔先に立たずだ。

「チョコレートの話はなんだ?」

「あれはたいしたことじゃない。飛翔さんの話を聞いて念のため心羽が出した伝票をチェックしたんだ。怪しかった伝票はあるにはあるがどれもたいした金額じゃない。五千円のチョコレートも一回だけだ。俺の名前と手土産と記載があった」

「社内データは大丈夫なのか?」

「それもチェックした。あいつは俺が頼んだ仕事しかしていない。大丈夫だ。心羽は最低限度の仕事しかしていなかったよ」

「あぶねー。いやー、まじでこれから気をつけるわ。悪かった綾星、俺も完全信用してた」

 透は大きなため息をつきながらソファーの背もたれに体を預けた。

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