愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
『離婚なんて考えたこともなかったんだ。呆れるだろうけど、俺はこの三年間会社を立て直すのに必死で。とにかく全てはその後だと。すまなかった』

『あやまってばかりですね』
 クスッと笑った星光の微笑みには、力がなかった。

『私、もめたくはないんです。追及して疲れ合って、嫌な思いをして。そういうのは……。慰謝料ならいらないから大丈夫ですよ?』

『そんなこと言わないでくれ。頼む、半年、いや三カ月でいい。俺を見てくれないか? 君と向き合う時間がほしい』

 しばらく無言で歩き、振り向いた星光は、ひと月ならと言った。

『そこまでおっしゃるなら。ひと月、マンションに戻ります。それでいいですか?』
『ありがとう』

 俺は彼女が天使に見えた。
 とにかくこのひと月、星光と話し合いたい。

 同時に俺は自分の気持ちを見つめ直す必要がある。いったい自分は彼女をどう思っていたのか。別れる気もないくせになぜ、妻を大切にできなかったのか。

 俺は彼女を嫌いなんだと思っていた。嫌いならこんなに執着するのは変だ。

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