粗大ごみを拾ってしまった(番外編その4)大森VS巫女の恋愛格差問題
<神社・裏手・公園>

「もうすぐ、迎えが来る」
瞑王は空を見上げた。

風が吹き始めた。

ご神木の幣帛(へいはく)
揺れ続ける。

天気予報では
夕方から低気圧が入り、
天気が下り坂になるとのことだった。

「雲が厚くなってきているな。
気圧の急激な変化で、
迎えが迷っているかもしれない」

瞑王はそう言うと、大森を見た。

「俺が天界の迎えを誘導するから、大森、ここでリシェルを
見張っといてくれ」

すぐに瞑王の姿が、
木々の間に消えた。
残像のように、金粉が舞い散った。

大森と二人だけになると、
リシェルが顔を上げた。

「大森様・・ごめんなさい・・・
いっぱい、いっぱい
迷惑をかけて・・わかっています。

大森様は、お兄様が好きな事
私はお兄様には、かなわないから」

「それは・・・!!」

大森は返答に窮したが、
リシェルは首を横にふった。

「私は神殿に戻ったら、
大森様や現世のすべての記憶は、
消去されてしまいます。」

リシェルは
ポロポロと涙をこぼして、
吐き出すように言った。

「だから!!
大森様には私の事を、
覚えていて欲しいのです!」

そう言い終わると、
リシェルは顔を下に向けた。
小さな肩が震えている。

大森は(こぶし)を握った。
最後の別れなのだ・・・
本当に・・

目の前のリシェルは、
罪人のように扱われている。

何も悪いことをしていないのに・・
<俺のせいで・・>

闇が深くなり、
リシェルの姿は、
黒いシルエットのように見えた。

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