【完】鵠ノ夜[上]



もちろんブーケトスでいただいたもの。

雛乃ちゃんが抜群のコントロールで上げてくれたおかげで、無事にわたしがもらうことになった。



「もらえてよかったな」って、披露宴で同じテーブルだった和璃と憩は笑ってたけど。

なんとなく嫌味にしか聞こえなくて拗ねていたら、憩にぽんぽんと頭を撫でられて。



「幸せになれよ」と囁かれたせいで、少しだけ切なくなった。

……幸せにしてやる、とは、もう二度と言ってくれない。



披露宴は、予想以上に規模が大きかった。

今回わたしは雛乃ちゃんと仲が良いから招待してもらったのに、正直お父様が出席していてもおかしくないような相手が大半。



裏には極道という大きな組織があれど、表向きには社会に違反していない会社も多数設立している御陵。

わたしが御陵の娘であることも有名なもので、気が抜けないほどには声をかけられた。



「少しお休みになられますか?

かなりお話しされていましたから、お疲れなのでは?」



うん、と小さく頷く。何度か出向いたことはあるが、やっぱり社交場には慣れない。

小豆に寄りかかるようにして瞼を閉じると、セットした髪をゆっくり解いてくれる。




「、」



纏められていた髪が、さら、と流れ落ちる。

すべて解き終わったかと思えば手櫛を通し、わたしの化粧直しのために持参しているポーチの中から取り出した櫛で、また丁寧に梳いてくれる。



「……至れり尽くせりね」



「私が雨麗様にできることはこれくらいですから。

横になられるのでしたら膝枕でもしますよ」



「遠慮しておくわね」



くすくす笑い合うこんな瞬間も、憩が使用人の時はなかった。

あったのは、主従関係にしてはヤケに濃密な空気感、と。



「櫁……、」



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