一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
『最近悩んでないか? 先月おばあさんの葬式で帰郷して以来、山本の様子がおかしい』
俺が尋ねると彼女はその瞳に暗い影を落としながら答えた。
『大好きなおばあちゃんが亡くなったからショックだったの』
もっともらしい答え。
確かにショックだったとは思うが、他にも悩んでいることがあるはず。なのに俺には打ち明けない。
彼女の返答に納得できず、今度は違う質問をした。
『じゃあ、最近部長とこそこそしてるのは?』
『ちょっと実家のことで相談してて……祖母の葬儀でゴタゴタしてたから』
また当たり障りのない答えが返ってきて溜め息をつきたくなった。
まあ素直に白状するとは思っていなかった。
雪乃の前に竹下部長にもそれとなく聞いたが、こちらも誤魔化されたから。
『さっき山本となにを話していたんですか? ずっと彼女、部長室から出てきませんでしたけど』
『ああ。僕の健康診断の結果があまりよくなくてね。そのことを話したら、間食は禁止ですって山本さんにお説教されちゃってさあ。でもねえ、ついついお饅頭とか食べたくなるんだよね』
ハハッと笑って膨らんだお腹をさする部長を見てイラッとした。

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