視線が絡んで、熱になる【完結】
二次会のバーは、他にも飲食店の入っているビルの三階にあるこじんまりとした店だった。
「いらっしゃいませ」
低くて甘い声が琴葉たちがドアを開けた瞬間に響く。カウンターはほぼ埋まっているようで琴葉たちは奥のテーブル席に案内された。
従業員(バーテンダー)はどちらも男性で30代後半に見えた。落ち着いた雰囲気が漂っていた。
柊と美幸が隣り合うように自然に座った。もしかしたら本当に二人は今後恋人同士になってしまうのでは、そう思った。

メニュー表を開いてみても琴葉の飲みなれた酒はない。
柊や涼、それから美幸が飲み物を決めても琴葉はまだ何がいいのかわからずにいた。しかし待たせるのも申し訳ないから、あたふたしていると目の前にいる柊がふっと小さく笑って言った。

「別に焦る必要はない。でも琴葉ならこれじゃないか。季節のカクテル。果物使ってるし飲みやすいだろう」
「ありがとうございます…じゃあ、それで」
「飲みすぎないように」

すぐに上司の顔に戻るが、一瞬でもオフの時の表情を見せてくれてしかも“琴葉”と名前で呼んでくれた。
周りに変に思われていないか心配だったが、それよりも嬉しさが勝った。
店内は静かにグラスを揺らしながら一人でしんみりと飲んでいる人や、カップルで楽しそうに喋っている人達など様々な人がいた。

注文したカクテルが運ばれて来るまで他愛のない会話をする。
琴葉はそれほど酔ってはいないが、美幸はテンションが高いようだ。何度も喋りながら隣の柊へボディタッチをしていた。

(…どういう関係なのだろう?橋野さんは絶対に柊さんに好意があると思うけど…)

意識を逸らせるために周りの客の会話を聞いていた。バーテンダーと会話を楽しみながら追加で飲み物を注文している女性はメニュー表を見ないでロング、ベリーなどと琴葉には理解できない単語を連ねて頼む。
< 143 / 190 >

この作品をシェア

pagetop