視線が絡んで、熱になる【完結】
確かに琴葉以外の三人はメニュー表を見ないで決めていた。こういうところに来るのに慣れている人たちはそういう頼み方をするのかもしれない。
途端に恥ずかしくなってきたが、今更どうしようもないから今度は勉強もかねて一人で来てみようと思っていた。
「お待たせしました」
テーブルの上に置かれる見た目も素敵なカクテルに思わず笑みを浮かべていた。
メロンが使用されているのは色だけでなく、大き目のロンググラスの縁にカットメロンが添えられているから一目瞭然だ。
感嘆の声を漏らすと、柊が琴葉を見ていることに気づき、すぐにグラスへ視線を移す。

何度も目が合うのは琴葉が柊を意識しているからだろう。
ジントニック、ギムレットなどがテーブルに並び二次会が始まる。仕事の話題よりも他愛のない会話の方が多く、美幸が“個人的に”といったように会社関係を意識しない飲み会なのだと再確認した。

だからこそ、美幸の柊への距離感が気になった。

「どう?美味しい?」
「美味しいです。あまりお酒の感じがないというか…私ウイスキー飲めないのでこういうバーに来たことなかったんです。でもこんな飲みやすいドリンクもあるんですね」

隣に座る涼が琴葉を気にかけるように訊く。
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