視線が絡んで、熱になる【完結】
「そうだよ。俺の家の近くにもあるんだ、おすすめの隠れ家的なバーが。よかったら今度一緒に行こうよ」
「いいんですか?じゃあ行ってみようかな…」
こういうのも経験、だ。25歳にもなって経験値が低いことが密かにコンプレックスになりつつある。

「ダメだ」
「…え」

しかし、涼と琴葉の会話に苛立ちを含む声を向けられる。
一斉に皆の視線が柊へ向く。美幸はあからさまに怪訝そうな面持ちで柊を見ていた。

「どうしてですか?社会勉強にもなるし。あ、俺は別に琴葉ちゃんをどうこうしようなんて思ってないですからね!今は先輩として付きっきりで仕事教えていますけど」
「ダメだ。新木じゃなきゃいけない理由はないだろ。だったら俺が連れていってやる」
「…いや、別にそこまでしていきたいわけじゃないので」

やんわりと断るものの、柊の今にも舌打ちが出そうなほど苛立った様子に内心首を傾げていた。
(いつもの柊さんじゃないなぁ…)
彼のそのような様子に驚いているのは琴葉だけではない。涼や美幸も琴葉と同じ顔をしていた。

「そういえば不破さんはこういうところよく来るんですか」

ぎこちない雰囲気を感じ取ったのか美幸が話題を変えた。柊は美幸の方にチラリとも目をやることなく目の前のグラスに手を伸ばし、相変わらず整った唇にそれが密着する。
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