視線が絡んで、熱になる【完結】
数日間、琴葉は柊の家には行っていなかった。
腕時計だって返してもらったし、柊に会いに行く理由もないからだ。それなのに、夜一人で眠っていると胸の奥が疼いて柊の声や熱い目を思い出してしまう。
やはり自分はどうかしてしまったのだと思った。
化粧品は柊の自宅にあるから結局今週化粧をして出社したのは一日だけだった。

仕事に関しては、覚えるというよりも慣れてきた、というところだろうか。
コーポレート人事部で働いていた時よりも圧倒的業務量に心が折れそうになるが、同時に楽しさも見出していた。
就職活動中に心動かされた広告に携わることが出来ているという実感だろうか、琴葉にとっては全てが苦ではなかった。
今日は金曜日で涼から飲みに行こうと誘われていた日だ。なので、残業はしない予定だ。
柊も来ると言っていたが、どうなのだろう。

そればかり気になっている。実は柊が金曜日そのまま家に泊まっていけばいいと言っていたから下着など必要なものを持ってきていた。

(…まるで、私が彼の自宅へ行きたいみたいじゃない)

キーボードを打つ手を止めて周りに気付かれないように一息入れる。

と。

「どうしたの?ため息?」
「わ、違います!ちょっと一休みしてただけで、」
「ふぅん?なんか業務とは違うこと考えているように見えたけど」
「そんなことないです!」
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