視線が絡んで、熱になる【完結】
涼は意外に鋭い。仕事でもそうだが着眼点がいい。それは多角的に物事を捉えることが出来ているからかもしれない。そのせいで柊との件がバレてしまわないか心配だった。

「あ、わかった。恋してるんでしょ?」
「…え、」
「あれ?違う?そうかなと思ってたんだけど。だって目が恋する女の子って感じだし」
「ち、違います!勝手に決めつけないでください!恋はしないんです」
「どうして?これからいい人できるかもしれないのに勿体ないよ」
「…出来ませんよ」

涼の推測をすぐに否定したが、どういうわけか胸の中に靄がかかる。

…何だろう、この感覚。

好きなわけないじゃないか、そういう感情はない…はずだ。
しかし一度気になるとずっとモヤモヤしてしまう。このままいくと業務に支障が出てしまうだろう。

と、その時目の前に座っている智恵が柊のデスクへ行くのを目で捉えた。
ノートパソコンを持ったまま、柊のデスクへ行くと二人は近い距離で何かの確認をしている。

後ろ姿も横顔も何もかも美しく妖艶で、琴葉にとってあこがれの女性である智恵は柊にお似合いだった。

自分も智恵のようになれたら…柊の隣を歩いても違和感はないだろうが今のままでは…とここまで考えて遥か昔同じことを考えたことがあることに気づいた。

(…学生のころだ。大学時代、春樹と付き合った時と同じ気持ちだ)

直前に涼に言われた“恋をしている目”というフレーズを何度も脳内でリピートする。
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