エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「俺が言っているのは今のその格好だ」

「だって、まさかあなたがテラスに出ているとは思ってもみなくて。私は部屋に戻りますから、どうぞゆっくりなさってください」

 やっぱり私の薄着を忠告しているようだ。

 月城さんに背を向けて部屋に戻ろうと一歩踏み出したとき、背後から腕を掴まれ引き戻される。

「きゃっ!」

 クルッと体が回転させられて、月城さんと対面する形に。

「どういうつもりですかっ!?」

 声が響かないように小さな声で、それでいて厳しい声色で言い放つ。

 彼は自由な手で私が持っていたペットボトルをテーブルの上に置く。

 まだ月城さんの手は私の腕を掴んでいるので、私たちの間には人ひとりが入れないくらい近い。

「別に襲おうとしているんじゃない。今まで盗撮されていたかもしれないと示唆しているんだ」

「え? と、盗撮……?」

「いいから従え」

 距離が詰められた。抱きしめられると、月城さんの清潔なソープの香りを思いっきり吸い込んで、胸がドキドキしてくる。

 彼のせいじゃない。彼が〝盗撮〟なんて信じられない話をしたからよ。

「ボディガードを雇えるくらいの金持ちなんだろう? 盗撮なんてわけない。ここは住宅地だが、例えばあの高い建物から」

 月城さんは、ここからかなり離れた商業施設とホテルの入った高層タワーを言っている。
「で、でも離れすぎて……」
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