愛しの彼に溺愛~石油王の場合~
「なら、上書きしてもいいか?」
「いいよ!!それにしても本当にムカ…って、え?う、上書き…!?」

「言質は取ったからな」


弥生が固まっている間に額にキスをする。


「っへ?」とまぬけな声をだしながら額を抑える弥生に、俺は自然と笑顔になる。


「っくく。どんどん赤くなるな」
「ま、ちょ、…え!?」
「っくく…!」
「も、もう笑わないでよ…!」


俺の肩をポカポカ叩く彼女に愛しさが湧いてくる。


「っくく…、はぁー、笑った。…これで上書き完了。もう気にしなくていい」
「…でも」
「弥生を幸せにするのは俺の務めだ。確かに嫉妬しなかったといえば嘘になる。でも正直に話してくれたうえに、シキの時には避けることができるようになった」
「アキさん…」
「だが不安や怖いことがあったら絶対に俺に言ってほしい。俺も必ず弥生に伝える。俺達は嘘のない夫婦になろう。もちろんサプライズとかは別だがな?」
「っふふ。えぇ、そうね。…誓うわ」
「ふむ。…誓うには何か足りないと思はないか?」
「そうね…。例えばキス…、とか?結婚式みたいな」
「正解だ」


俺達は二人でクスっと笑った後、どちらともなくキスをした━。


「んぅ…。ねぇ、アキさん」
「なんだ?」
「アキさんは幼いときご両親と仲良かったの?」
「いや、俺はずっと反抗期だったからな。むしろよく喧嘩をしていたし、両親を何度も泣かせてしまったよ」
「なるほど…!」
「ん?何が、なるほどなんだ?」
「ううん。何でもない!」
「おい、教えろ。さっきまで嘘はなしって誓いあっただろ?」
「えー?そうだっけー?」


こんな幸せな日々がずっと、ずっと続きますように。
滅多に神頼みしない俺が、この時ばかりは心から願った。
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