君は残酷な幸福を乞う
欲求
「若葉」
駅裏の人気のない路地。
高級車が止まり、運転手が後部座席を開け出てきた彼・市川 琉軌。

「琉軌!」
「お待たせ。三週間振りだね!」
「フフ…」
抱きつくと、優しく包み込むように……でも離れないように強く抱き締める琉軌。

「琉軌の匂いだぁ!幸せ~!」
「そう?」
「今日は一緒、いれるんだよね?」
「うん」
「良かったぁ」
「車、乗って?」
「うん…」

琉軌は若葉の腰を支えて、後部座席に促す。
若葉が乗り込むと、隣に乗り込みまた腰を抱いた。

「どこ行きたい?」
「うーん。映画見ない?」
そう言って、若葉がスマホ画面を琉軌に見せる。

「ん。了解!瑞夫、映画館」
「了解」
運転席に座っている、琉軌の部下・津多 瑞夫に伝えるとゆっくり車が走り出した。

映画館に着くと瑞夫が後部座席のドアを開け、琉軌が降りる。
「若葉、おいで?」
そう言って、若葉に手を差し出す。
その大きな手を握ると、グッと引っ張られて車から降りた。
そしてまた腰を抱く。

映画館のドアをまた別の部下が開け、中に入るとそのままチケット売場ではなく、ソファに座る。
ぴったり並んで座り、足を組んだ琉軌は若葉の腰を抱いている。
「琉軌、チケット」
瑞夫がチケットを購入して、琉軌の元に来る。
「上映まで、あと一時間位あるよ。どうする?」
「そう。
若葉、どうしたい?」
「微妙な時間だね!
でもうろうろする時間はないから、ここでゆっくり待ってよう!」

「わかった!じゃあ…キスでもする?」
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