ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


「えへへ、渚」


「急に素直になんの、やめて……心臓に悪いから」


どうしよ、俺。

今日命日とかじゃない?

彼女が尊すぎて死にましたとかシャレになんねーけど、これはまじで死ぬ寸前だって……!


「ねえ、渚」

「ん?」

「……たい、」


「え?」

「キス、したいな……だめ?」


「っ、はあああ!?」

「うわっ!びっくりした!
耳元でそんな大声出さないでよっ!?」


いや……出すに決まってんだろこんなの!


「なに?どうしたの?
なんで急にそんな素直になってんの?
俺、まじで死んでもいい……」


初のおねだりがキスってかわいすぎだろ!?

こんなのもう、しっかり頭に記憶して……。


「い、いや」


「え?」


「死んじゃ、いや……私をおいて」


ぐっは!

俺に1000のダメージ。


やべ、今完全に意識飛んだ。


「じゃー、殺すようなこと言うなよ」

「っ……!!」


なんか、ふだんむぎがはずかしがる理由がわかる気がする。

こんなドキドキしてんのバレたくないって、とにかく余裕ぶろうと必死になって。


「俺もむぎから離れたくない」


下から覗き込んで、そっと頬に口づける。

あ、大人しくなった。

ほんと、かわいい。
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