ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


不安になって名前を呼んですぐ。

ガチャりとうしろで鍵が閉まった音がしたかと思ったら。


な、なんで……っ。


「ふっ、あっ……!」


最初から足が震えるほどの深いキスが落ちてきた。


「っ、なぎ、」


暗くて見えない暗闇の中、私にふれてくる渚だけが頼りで。

ぎゅっとそのシャツを掴めば、すぐにその手をやんわり開かれて、すぐに指が絡む。


「っ、ふっ、やっ……」


なんか、今日の、渚……っ。


力が抜けるほど激しかった唇が、どこか焦るように、耳、首すじ、鎖骨へと落ちて。


プツッ。


「っ、な、ぎさ……っ」

「っ、は……、」


胸元のリボンが外れてすぐ。

力が抜けてしまった私の足がガクンとして、床に倒れる寸前。


「むぎ……」


ぎゅうっと、強く、強く、抱きしめられた。


「なぎ、さ……?」

「むぎ……」


どうしたの?

なにかあったの?


そう聞きたいのに、言葉が、口がうまく開かない。

息が上がって目もうるんで。


「なぎ、さ……」


ただその名前を呼ぶしかできなくて。


「余裕なくて、ごめん……ごめんな、」


抱きしめられた腕の中聞こえた声は、掠れて闇にとけそうなほど小さくて。


暗闇で見えないはずの渚の表情は、切なく苦しげに歪んでいた。
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