ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


だからって、なんでこんな夜中に!?


「っ、ふ……」


やばいやばいやばい……っ。

心臓がドッドッドッと音をたてている。


覆い被さられて、身動きがとれないこの状況。

でも今私が焦っているのは、そういうことじゃなくて。


「ごめん、苦しかったよな」


囁かれた優しい声に、体が跳ねそうになるのを、目を閉じて必死にこらえる。


「手、放して……」


落ちつけ、落ちつけ。


ぎゅっと目を閉じたまま、手首を掴む渚の手に意識が向かないようにする。

唇からは離してくれたけど、でも、でも……っ。


「無理。
強引なのはわかってるけど、どうしても我慢できない」


手首を掴んでいた手がするりと指に絡まって。


「っ、そもそも、なんで……いる、の?」



私、星見(ほしみ)むぎ、高校2年生、16歳。

午前0時0分01秒。


月の光だけが差し込む暗い部屋の中で。


「そんなの決まってる」



幼なじみ兼彼氏の、渚に。



「夜這い?しにきた」



今すぐ襲われそうです。
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