ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


いや、なんかじゃない。

口を開けば、変な、みっともない声が出そうで。


「ん。無理して話さなくてもいいから。
むぎ。俺、一緒にいて、いい?」


コクコクッ。

くらくらする頭でなんとかうなずけば、渚は安心したみたいに、ふわっと笑った。


「歩ける?
お姫様抱っこしよっか?」


フルフル。


「ふはっ、さすがにそれはいやか」


未だぽろぽろ泣き続ける私を元気づけるためか、笑って、そんなことを言う渚。


「ん、俺冷やすものとか、飲み物とかとってくるから、むぎは着替えてて」


そして部屋に着いて、渚は私をベッドに座らせると部屋を出ていった。


「っ、ううっ……」


渚に好きだって言いたい。

渚にふれてほしい。


でも、ふれられてしまえば、症状を抑えられらなくなる。


友達も、家族も大丈夫なのに。

なんで。どうして。


なんで……。

なんで……!


なんで、渚がふれたときだけ、こんなひどいの……!


1人になった瞬間。

症状とは別の涙があふれてきて、とまらなくて。


心臓が痛い。

息が苦しい。


こんな異常な体質な女なんて、気持ち悪いに決まってる。


渚に嫌われたくない。


私は渚が戻ってくるまで泣き続け、1人心に強く誓った。


渚に嫌われるくらいなら、告白なんてしない。

ふれられないように、するしかない。
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