ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


「まあまあ、ふたりとも。
親子げんかはそれくらいにして、ね?
汐、ふたりにプレゼントがあるんだろ?」


「プレゼント?」


「そうなの!
ずっと準備してたものなの!」


「却下。
どうせまた変な人形とかだろ」


「ちょっ、渚!」


その言い方は……!

相変わらず嫌そうな渚を慌てて静める。


たしかに汐さん、出張のお土産とか仕事関係のいただきものでって、いろいろうちに持ってきてくれてるけど、ちょっと変わったものが多いような……。


「違うわよ!
てか、変な人形ってなに?これはあたしたちだけじゃなくて、むぎちゃんのお母さんたちにも相談して決めたものなんだけど?」


「え、お母さんたちも?」


「そうよ〜!渚くんのために、あたしもお父さんも進んでOKしちゃった!」


え、私は?


ニヤニヤニヤ。

ニコニコニコ。


渚と私以外の4人が、みんな恐ろしいくらいの満面の笑み。


プレゼントって本当、なんのこと……?


「母さんがそこまでウキウキしてるの、逆に怖いんだけど。で、プレゼントってなに?」


「ったく、あんた口を開けば嫌味しか出てこないの?まあ、いいわ。あんたがこの世で一番ほしいものだと思うわ」


「俺がこの世で一番ほしいものはむぎだけど」


「っ、なっ!?」


ぼっと顔が熱くなる。


親の前でなにいってるの!?

しかも真顔で!


「きゃあっ!
渚くん、男前〜!!」


……うるさい、お母さん。

いい歳したおばさんがウキウキしないで。


「あー、はいはい、そういうのはいいから」


「……」



「むぎちゃんあたしたちからプレゼント!」


「えっ、は、なにをですか……?」


渚の言葉を華麗にスルーした汐さんににっこり笑いかけられた。


「うふふ、それはね……」
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