すべてが始まる夜に
「屋台ってそんなにいっぱいあって、いろんなごはんが食べれるんですか?」

「そうだよ。みんなそれぞれお気に入りの屋台があったり、1軒の屋台だけじゃなくて何軒かはしごしたり……。とにかく屋台の数がすごいから。見たらびっくりするぞ」

「へぇー、そうなんだ。福岡って私まだ一回も行ったことがないんです。今回の出張で初めて福岡に行くんですけど、一度行ってみたいな」

「じゃあ、出張のとき一緒に行ってみるか? 俺が案内してやるよ。旨いぞ」

えっ? と驚いていると、「飛行機は最終便を取っているから屋台で飯食っても十分間に合うだろう。あっ、そうだ。ひとつ言い忘れてた」と部長が何かを思い出したように両手を叩いた。

「来週の金曜日の出張だけど出発が早いだろ? ここからタクシーで行こうと思うんだ。一緒にタクシーに乗って空港に行こう。車だと空港まで30分くらいだから6時に出発な」

「タクシー? 一緒に乗って行ってもいいんですか?」

「どうせ同じところから出発するんだ。その方が効率的だろ?」

部長はそこでひと息つくようにビールを口に入れた。
コップが空になり、2本目の缶を開けて部長のコップに注ぐ。私はひとつだけ確認したかったことがあり、部長の顔を窺うように視線を向けた。

「部長、あの、ひとつお聞きしてもいいですか?」

「んっ?」

「来週の出張なんですけど、帰りの便って変更することは可能ですか? もし変更してもいいのなら、私、次の日に変更したいんですけど」

「次の日に変更?」

部長は私の言っている意味が理解できないらしく、首を傾げて問い返してきた。
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