すべてが始まる夜に
うわっ、すごく綺麗な人。モデルさんみたい……。
部長と知り合いなのかな?

女性は驚いた顔をして部長を見つめている。
見惚れてしまうくらい目鼻立ちのはっきりした美しい女性だ。横に視線を向けると、部長も驚いた表情をして女性の顔をじっと見ていた。

ほんの一瞬、女性が視線を動かして私に睨むような鋭い視線を向けたあと、今度は怪訝そうな表情を部長に向ける。

「もしかしてその人のせいで悠樹……」

そう言いかけたところで、「麗香、どうしたの?」と後ろから友人と思われる女性が近づいてきた。

「もしかして、知り合い?」

その女性が私たちの顔を交互に見ながら綺麗な女性に尋ねる。

「うん、ちょっとね……」

綺麗な女性が友人の女性に向けて可愛らしくニコッと微笑んだ。
その瞬間、私は「あっ!」と声をあげそうになった。

いっ、今この人、悠樹って言ったよね……?
そうだ、この人って松永部長の彼女だ。
カフェで部長にすごいこと言った……、あの人だ。

カフェで彼女を見たときは離れていたし、横顔しか見てなくて、今の今まで全く気づかなかったけど、友人の女性に振り返ったときに見えた横顔は、あのとき見た彼女と同じ横顔だ。

部長は何も言わず、笑うこともなく、無表情のまま彼女から視線を逸らした。

彼女は今日もまたここであんな恥ずかしいことを部長に向けて言うのだろうか。
今日はあの時よりもかなりお客さんも多いし、もしまた部長が人前であんなこと言われたら……。

怖くて耳を塞ぎたくなってくる。
ハラハラと心配しながら様子を見ていると、どういうわけか周りのお客さんたちがざわざわとしながらこっちを見始めた。
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