すべてが始まる夜に
「はい、ここ座って」

緊張しながら部長の肩に手を乗せて膝に跨ると、部長の足も一緒にふわりとスカートで覆われた。
スカートで覆われてはいるものの、今の私は足を開いて跨っている状態なので、もしスカートが捲れでもしたら下着が丸見えになってしまい、心許なくて仕方ない。
スカートが捲れないように整えて前を向くと、部長の顔がすぐ目の前にあった。

うっ、うそ。
部長とこんなに顔が近いの?

かなり顔が近いうえ、跨っていることで部長の腿が私の腿に直接当たって、体温がじわじわと伝わってくる。

前を向けば嫌でも視線は合うし、スカートは捲れないか心配だし、スカートの下は部長の足と密着しているし、もうどこに視線と意識を持っていっていいか分からず、パニック寸前だ。

俯きながら部長の肩に置いていた手を下におろすと、部長はその手を掴み、もう一度自分の肩に置いた。

「バランス崩したらいけないから、落ちないように俺の肩に両手を置いて」

言われた通り両肩に手を置くと、部長は逆に優しく触れるように私の腰に両手をまわした。
腰に触れられた瞬間、身体が無意識にビクンと反応する。

「これだとキスしやすいだろ? ほら、目をそらさないで俺の顔を見て」

緊張しながら部長に視線を向けると、部長がじっと私を見つめている。

「じゃあこのまま俺にキスしてみて?」

「こ、この状態で、キ、キスですか? で、できません。部長、無理です」

「そのまま口を近づければできるだろ? この前みたいなキスとは言わないから、ほら、キスして。こんなこともできなかったら、この先のレッスンなんてもっと無理だと思うけどな」

「で、でも……、じゃあ部長、目を、目を瞑ってください。部長に見られてたらできない……」

恥ずかしさで泣きそうになりながら必死で首を振ると、部長は静かに目を閉じてくれた。
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