すべてが始まる夜に
お皿のケーキもコーヒーも全部なくなっている。
そんなにケーキが食べたくて食べたくて仕方なかったのだろうか?
言ってくれたら私のケーキもあげたのに……。

急いでケーキを食べてパウダールームのドアをノックして開けると、部長は既に露天風呂に入ってしまっていた。

もう入っちゃったの?

私も服を脱ぎ、タオルを身体に巻きつける。
そしてシャワールームを通り、露天風呂の扉を開けた。
扉を開けた瞬間、部長が私の方へ振り返る。

「だっ、だめ。こっち見ちゃやだ。悠くんは前を向いてて、お願い……」

部長は何も言わず素直に前を向いてくれた。
ほっと安心しながら、タオルを取り、露天風呂の中に足を入れる。

ゆっくりと身体を沈めていると、部長が私の腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。

「横じゃなくて、俺の方を向いて俺の脚の上に来て」

有無も言わさず腰に手が添えられ、部長の上に跨るように座らされる。
いくら外が暗いとはいえ、何も身につけないまま、部長と向かい合って座るなんて恥ずかしさが半端ない。
どうしても目を合わせることができず、俯いてしまう。

「茉里、顔をあげて俺の方を見て」

部長の声に、ゆっくりと顔を上げると、そこには優しい笑顔で私を見つめる部長がいた。
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