すべてが始まる夜に
プレゼントの意味
朝起きると、隣にいるはずの部長の姿はなくて、布団にはほんのりと温もりだけが残っていた。
慌てて飛び起きて時計を確認すると、まだ時間は6時を過ぎたところだった。

「6時……。悠くん、もう起きてるの……?」

何も纏わずに寝てしまっていた自分の姿を見て、急いで下着とパジャマを身に着ける。
寝室を出てリビングを覗くと、部長がパジャマ姿のままソファーに寝転んでタブレットを見ていた。

「悠くん、おはよう」

「おはよう茉里、もう起きたのか? まだ早いし眠いだろ。昨日はかなり疲れさせただろうから6時半になったら起こそうと思ってたんだけど」

「悠くんは? もしかして私がいたから眠れなかったの?」

心配になって尋ねると、部長はソファーから起き上がり優しい顔を向けた。

「違うよ。茉里が隣にいてくれたおかげであたたかくてよく眠れたよ。でもあのまま寝てたら、また茉里を抱きたくなって会社に行くのが嫌になるだろ? だから無理やり起きてこっちに来た」

「えっ?」

理由を聞いて驚くのと同時に、仕事の好きな部長でも会社に行くのが嫌になることがあるんだ、と思ってしまう。

「なんだよ、その顔は……。また触るのかって顔か? 仕方がないだろ、茉里と一緒にいたら触りたくなるんだから。もしかして引いたか?」

「そ、そんなこと全然思ってないよ。朝起きて一番最初に悠くんの顔が見れたらうれしいもん。それより悠くんも会社に行きたくないって思うことがあるんだね。そっちにびっくりしちゃった」

私の言葉に部長はうれしそうな顔を向けると、「茉里、こっちきて」と言って私を自分の膝の上に跨がせ、背中に両手を回して私を抱きしめた。
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