すべてが始まる夜に
「皆さん、お久しぶりです。今日はありがとうございます」

部長がさっそく如月さんたちの前に行き、挨拶をする。

「素敵ないいカフェに変わったわね。さすがね、松永くん」

「松永くん、会いたかったわよー。元気だった? 東京なんかに行っちゃって……」

「そうよ、遠すぎるわよ。早く福岡に戻ってきなさいよ」

如月さんをはじめ、おばさんたちが部長の手を掴み、嬉しそうに話をし始める。

「このカフェは如月さんがギャラリーで使われてた家具をほとんどそのまま使わせてもらってるんです。僕も皆さんと過ごしたこの思い出のギャラリーをこんな風にプロデュースできて、とても嬉しいです」

「また……ほんとに松永くんはおばさんたちを喜ばせるのが上手ね」

「そんなことありませんよ。今日は今までお世話になったお礼として、僕にご馳走させてください。ただし、周りのお客さんには内緒ですからね」

部長が口元で人差し指を立てると、「いい男はこれだから困るわ。ますます好きになっちゃうじゃない」とおばさんたちが口々に言い始めた。

いろんな人たちに好かれている部長を見て、改めて尊敬してしまう。
嫌味じゃなく、心から人を喜ばせることができるなんて、やっぱり部長はすごい人だ。
そんな素敵な人のそばにいれるなんて、私は本当に幸せ者だ。
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