すべてが始まる夜に
検索すると駅前のクリニックの他、駅の反対側の改札口の近くに1軒、スーパーからもう少し南寄りに1軒あった。

「土曜日だから全部午前中までの診療だよね。明日の朝熱を測ってみて、まだ高いようだったら病院に行ってもらうように言ってみよう」

部長は寝返りも打つことなく静かに眠っている。
だけど、さっきまで寒そうな様子だったのに、首元に結構な汗をかいていた。

「うわっ、すごい汗。着替えた方がいいんだろうけれど、私が着替えさせるわけにもいかないしな。せめてネクタイくらいは外してあげたいけど、勝手に触れないよね」

スーツの上着は帰ってきたときに自分で脱いだのか、ソファーの背もたれに無造作にかけてある。
ネクタイは首元は緩んでいるものの、まだ着けたままだ。勝手に外すわけにもいかず、せめて少しでも軽減になればと私は再びおでこにのせていたタオルをとり、冷たいものと取り替えた。

帰りたいけど帰れないし、暇だな……。

しーんとした音のない部屋の中、何もすることがないので暇で仕方がない。部屋の中を見ることも申し訳なく思えて、ただ部長が眠っている横に座ったままだ。
なので、気を抜いたら私までここで眠ってしまいそうになる。

私は眠気防止と頭を働かせるため、スマホで漫画でも読もうとアプリを開いて読み始めた。
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