ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

「ダメです。お休みの日にしましょう」

「君は土日も仕事じゃないか」

「じゃあせめて、日勤終わりにしましょう。今日は明日のオペに備えて、しっかり休むべきです」

 バシッと言い切ると、進藤先生は声を出して笑った。

「女性を食事に誘って、断られたのは初めてだよ」

 でしょうね。進藤先生に誘われて断れる人はそうそういないでしょう。

「私は看護師ですから」

 進藤先生のオペにミスがあったら、一番迷惑がかかるのは患者さんだ。それは避けなければ。

「だよな。よし、コンビニでも寄って帰るか」

「申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」

 誘いを断られたにもかかわらず、進藤先生は上機嫌に見えた。

 病院からアパートまで車で二十分くらい。あれこれ話をしたけど、あっという間に時が過ぎる。

「そこの角を左です。ありがとうございました」

 コンビニに寄った後、アパートの前まで送ってくれた進藤先生は、近所迷惑にならないようにライトを消した。

「お疲れ。少しでも、君と話せてよかった」

 シートベルトを外す私に、そんなことを言う先生。

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