若き社長は婚約者の姉を溺愛する
新しい仕事
 月曜日になったけど、普段と変わらず、宮ノ入出勤できるような状況ではなかった。
 土日の間、ほとんどなにも食べられず、眠りも浅かった私は、体に力が入らず、ふらふらで頭も回らない。
 でも、働かなくては、継母が渡したお金はわずかで、食事もままならなかった。
 私は清掃スタッフとして、働くよう言われ、やってきた初日の配属先は沖重(おきしげ)本社。
 何度か、父に届け物をしたことがあったため、これが初めてではない。
 継母が用意した服は、おばさんが着るような服で、唯一の利点として、掃除スタッフの年配の女性に溶け込めるというのが利点だろうか。
 とにかく、目立たずに済めばよかった。
 今の私にとって、これ以上の揉め事を受け入れられるだけの余裕はなく、寝不足のひどい顔が、ロッカールームの鏡に映る。
 掃除スタッフの制服に着替え、一緒に働くスタッフに挨拶をすると、ロッカールームが一瞬で、にぎやかになった。

「偉いねぇ。アンタみたいな若い子が、掃除の仕事とは感心だよ」
「その若さだったら、違う仕事もあったんじゃないかい?」
「そうだよ。綺麗な顔しているんだからさっ!」

 次々繰り出される会話の数々に、私は圧倒され、返事に窮する。
 作り笑いさえ、できなくなっていた私だったけど、向こうはまったく気にしていない。
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