若き社長は婚約者の姉を溺愛する
誓いの夜
 会社近くにある高級マンションに着くと、瑞生(たまき)さんは暗証番号をいれて自動ドアを開いた。
 セキュリティは厳重で、監視カメラが至るところに設置され、エレベーターを使用するにも部屋のカードキーが必要らしい。
 靴がないので、私を抱きかかえたまま、マンションに入り、私の姿を見たコンシェルジュの人が驚いていた。

「なにか履くものを」

 瑞生さんの声に、ハッと我に返ったコンシェルジュが、一度引っ込み、すぐに戻ってきた。

「こちらをどうぞ」
「す、すみません」

 スリッパを出してくれて、それを履く。
 そのスリッパもホテルで使用するようなもので、履き心地は悪くない。

 ――使い捨てスリッパさえ、高級品ですか?

 八木沢さんはコンシェルジュの人に事情を説明している。
 私が二人に誘拐されてきたようにしか見えなかったから、確かに説明はいると思う。

「このマンションは宮ノ入で働く親戚も住んでいるが、気がねすることはない。会っても適当に挨拶しておけばいいからな」
「は、はい」
「まあ、社宅だ。本社近くに別宅があると便利だからな」

 つまり、本宅も別に持っているってことですか……
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