若き社長は婚約者の姉を溺愛する
 さすが、巨大財閥宮ノ入グループ。
 規模が違い過ぎて、それ以上、深く尋ねる気になれなかった。

「部屋に飲み物と食べ物を頼む」
「かしこまりました」

 エントランスのフロントにいるコンシェルジュに頼めば、全部用意してくれるらしい。
 エレベーターは最上階まで止まることなく、一気に昇ると扉が開き、広いフロアに出た。
 そこはソファーやテーブルが置かれ、共用のスペースになっていた。
 高そうな絵画や壺、花が飾られ、フロアに入ったなり、良い香りが漂っている。
 部屋はそれも二つのみ。
 以前、雑誌で見た高級ホテルのペントハウス風の雰囲気がある。
 廊下の大きな窓から見える夜景が、とても綺麗だった。

「贅沢ですね」
「それだけ、稼いでいますから。会長は郊外の本邸に住んでいるので、本当に居心地がいいですね。空気もすがすがしい」

 八木沢さんにとって、祖父にあたる宮ノ入会長。
 一度もいいふうに言ったのを聞いたことがなく、どうやら二人は犬猿の仲らしい。

「こんなすごい場所に、私が来るとは思っていませんでした。こんな眺めも初めてで……」  
「いや、今日からここに住むんだからな?」 
 
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