【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】
 今まで、我儘放題で育った梨沙にとって、アパート暮らしは未経験。
 土足で入ってくるくらいだったから、我慢できない気がした。

「梨沙。詳しい話はわからないけど、借金は返さなきゃいけないのよ。それに、今辛いのは沖重で働いている社員たちよ。宮ノ入に買収されたとはいえ、全員が沖重に残って、働けるかどうかわからないの」
「社員の生活なんて……。そんなこと考えたことないわ」
「今、考えてみたら、わかるはずよ。梨沙が辛いと思うように、不安な社員は大勢いるの」

 梨沙は黙り込んだ。

「美桜!」

 運転手さんに呼ばれ、駆けつけてきたのは、警備員だけではなく、瑞生さん、八木沢さんも一緒だった。
 瑞生さんは私の無事を確かめる。

「次に侵入したら、警察に引き渡すと言ったはずですが」

 八木沢さんは冷たい目を梨沙に向けた。
 侵入したのは、これが初めてではないらしい。
 つまりこのボロボロな姿は、侵入を試みて、何度も失敗した名残だということ。

「なにがストーカーよっ! 私をストーカー扱いして、どういうつもり?」
「瑞生様を追いかけ回していたんですから、ストーカーでしょう? 警察へ連絡を……」
「直真。待て」 

 瑞生さんが手に力を込めたのがわかった。

「日曜日、沖重の家へ行く。そこですべてを終わらせよう」
 
 ――沖重の人々と関わるのは、これが最後。
 
 瑞生さんの低く温度のない声音に、そんな予感がした。
 冷えた黒い目が梨沙を見下ろし、まるで死神のように見えたのだった―
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