若き社長は婚約者の姉を溺愛する
決別
 ◇◇◇◇◇ 

 日曜日になにがあるか、瑞生さんは当日になるまで教えてくれなかった。
 自宅の差し押さえは今週で、まだ家の中に入れたけれど、中の家財道具はなくなり、がらんとしていた。
 この家で暮らしていて、辛かったのだと気づいたのは、自分の足が玄関から先に進むのをためらった時だった。
 心を鈍くしていただけで、本当は――横に瑞生さんがいて、手を握る。

「話すのは俺だけでいいんだぞ?」
「いいえ。会うと決めてましたから」
 
 深呼吸をひとつする。

 ――大丈夫。瑞生さんがいてくれる。

 家の中へ入ると、リビングには父と継母、梨沙が揃っていた。

「美桜……」

 私の名を呼んだ父は、一気に老け、白髪が増え、以前ような強さはない。
 隣にいる継母は、いつも綺麗にしていたのに、生活の厳しさからか、梨沙と似たような姿になっていた。

「お久しぶりです」

 挨拶した私を継母憎々しげに見つめ、父は目を逸らした。
 そんな簡単に人は変われない。

「わかっているのよ。私たちに仕返しに来たんでしょう!」
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