【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】
 泣けば泣いたで、『まだ子供だ』と言い出して、親戚のうちの誰かが宮ノ入グループを乗っ取ろうとするのは目に見えていた。
『父の跡を継ぐのは自分だ』――そう思っていたが、兄がいると言われ、動揺していた。
 祖父の後継者は、俺ではなく異母兄ではないのか?

「少し考えさせてほしい」

 祖父にも自分の動揺を悟られてはなるまいと、無表情で答えた。
『上に立つ者は、下に動揺を悟られるな』と、祖父にそう教えられたからだ。

「わかった」

 祖父はそれだけ言って、俺が住むマンションの部屋を後にした。
 十五歳になった今は、家族で暮していたマンションに戻り、俺一人で住んでいる。
 家政婦が用意した食事、片付けられた部屋――俺に足りないものはない。
 けれど、足りない。
『なにか』が。
 それを探して視線を窓の外に向けた。
 海沿いのマンションの窓から見えたのは海と夜景。
 暗い闇色の海が目の前に広がっていた――

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 祖父はなぜ俺に『異母兄がいる』と告げたのか。
 祖父は後継者に異母兄を考えているなら、俺にはっきりそう言ったはずだ。
 父と母は仲が良かった。
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